2.2. DNAを用いた機能性ナノ構造体の構築

論理素子と設計と同様に、それを連結するナノワイヤーの構築も、ボトムアップアプローチの重要な検討課題の一つです。そこで、分子の自己組織化を用いたナノワイヤーの構築が盛んに研究されています。特に、その構造形成と解離を外部刺激によって制御できれば、様々な応用展開が可能です。

image15我々の研究グループでは、外部刺激に応答するDNAナノワイヤーを開発するために、DNAの主鎖を化学的に修飾することを試みました。具体的には、金属イオンに配位して構造を変化させるビピリジンを核酸合成に適した形に誘導し、これを四重らせん構造を形成するDNA鎖の中央部分に導入しました。

image16その結果、金属イオンとビピリジンの結合をトリガーにして、DNAナノワイヤーを構築させることに成功しました。興味深いことに、このナノワイヤーの形成は、可逆的であり、非常に高いサイクル効率をもっていました。さらに、このナノワイヤーには、金属イオンが高密度に含まれていることから、天然のDNAとは異なった物性をもつことが期待できます。

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さらに、四重らせん構造と二重らせん構造を組み合わせて、カチオンやpHに応答するナノワイヤーを構築することができることも報告しています。詳しくはこちら6。今後は、これらの機能性ナノワイヤーを用いて、機能性分子の配向制御や、より複雑なナノ構造体の構築を目指します。